12誘導心電図がよくわからない!
このような悩みはありませんか?

救急外来や心臓カテーテルの治療を行う時には12誘導心電図を取ります。
検診センターでも心臓の検査のために電極を貼りますね。
この12誘導心電図はなぜ必要なのか?
この記事では12誘導心電図の目的や見方、手順などを解説します。
目次になります。
12誘導心電図の目的・適応・必要物品
12誘導心電図を取る目的は主に循環器疾患の診断に必要な検査です。
12誘導心電図は不整脈の診断、心臓の電気的位置診断、心房・心室の負荷及び肥大の診断、心筋障害の程度と範囲の診断を行うための検査です。
心臓の洞結節から始まる電気刺激が心臓の周囲の組織に広がって体の表面まで伝わります。
心電計は体の表面に付着した電極から電流をキャッチして、心臓の拍動ごとに起こる電気的エネルギーの時間的な変化を測定するものです。
心電図とは?
心電図は心臓の電気的運動を記録したものです。
心臓は生体のポンプとして一生休むことなく動いています。
収縮と拡張の繰り返しですね。
これは「心臓の機械的活動」と言われているものです。
この心臓の機械的活動の源は「心臓の電気的活動」と呼ばれているもので、心電図はこの電気的活動を記録したものです。
心臓は興奮状態と回復状態があり、それぞれ放電(興奮)と充電(回復)となります。
これらの現象を機械的に波形にしたものを心電図であるとも言えますね。
心臓の興奮状態(放電)を脱分極と呼び、回復状態(充電)状態を再分極と言います。

心臓の刺激伝導系
心臓は脱分極と再分極を自動的に繰り返しています。
これを心臓の自動能と言います。
最も自動性のある場所が洞結節と呼ばれてるもので、心臓は洞結節の興奮から始まります。
洞結節から始まった興奮が心臓全体に伝えていく大切な役割をするものを刺激伝導系と言います。
刺激伝導系は「洞結節→心房内伝導繊維→房室結節→ヒス束→右脚・左脚→プルキンエ繊維」の順で刺激が伝わっていきます。
心電図とはこの刺激伝導系による心臓の興奮過程を波として表したものです。
12誘導心電図の適応
12誘導心電図を取ることで診断や評価をできるものは以下のとおりです。
- 心筋梗塞、心筋炎、心筋症、心膜炎、心房負荷、心室肥大などの心筋の異常の判定と診断の補助
- 不整脈の診断と病態の解析
- 電解質(カリウム、カルシウム)異常の診断
- 薬物の作用、副作用の判定と評価
- 疾患の予後についての評価
- 自律神経系の緊張異常の判定
- 心臓の位置、電気軸の変化の判定
12誘導心電図の必要物品
12誘導心電図の必要物品は以下のとおりです。
- 心電計
- 記録用紙
- 電極シール
- バスタオル等の掛け物
心電図の記録用紙には1mmごとに細い線、5mmごとに太い線が引かれています。
心電図では横軸に時間が表示されていまして、1mm=0.004秒、5mm=0.2秒です。
12誘導心電図の注意事項
12誘導心電図を測定する時には以下のような注意事項があります。
- 上半身を露出するため寒さを感じさせないように室温を20〜25度に設定する。
- ベッドは患者さんが手足を伸ばして楽に寝られるサイズにする。
- 胸部を露出するために不要な露出は避けてプライバシーに配慮する。
患者さんのプライバシーを考慮することや、緊張させないようにする事も大切です。
心電図の誘導
心電図は標準肢誘導、単極肢誘導、単極胸部誘導を測定します。
標準肢誘導が3、単極肢誘導が3、単極胸部誘導が6の合計で12誘導です。

標準肢誘導
標準肢誘導は両手両足にクリップのようなものを装着して測定します。
Ⅰ誘導:左手と右手間の電位差(左側側壁)
Ⅱ誘導:右手と左足間の電位差(心室後壁)
Ⅲ誘導:左手と左足間の電位差(心室後壁)
単極肢誘導
単極肢誘導はaVR、aVL、aVFの三つのことを指します。
aVR:心室内膜面
右手の不関電極(左手と左足の結合電極)に対する絶対値。
右肩の方向から興奮が心臓の電気的中心より近づいたり、遠ざかってゆくのを記録している
aVL:心外高位面
左手の不関電極(右手と左足の結合電極)に対する絶対値。
左肩の方向から興奮が心臓の電気的中心より近づいたり、遠ざかってゆくのを記録している 。
aVF:心外側横隔面
左足の不関電極(右手と左手の結合電極)に対する絶対値。
横隔膜の方向から興奮が心臓の電気的中心より近づいたり、遠ざかってゆくのを記録している。

単極胸部誘導
単極胸部誘導は心臓電気変化を水面に投影して記録したものです。
V1:第4肋間胸骨右縁(赤色)
V2:第4肋間胸骨左縁(黄色)
V3;V2とV4の中間点(緑色)
V4;第5肋間左鎖骨中線(茶色)
V5;第5肋間左前腋窩線(黒色)
V6:第5肋間左中腋窩線(紫色)


V1・V2は右室、V3・V4は心室中隔、V5・V6は左室を表しています。
これにより心筋梗塞などでどの部位が障害されているか所見することが可能です。
12誘導心電図の手順
12誘導心電図を測定する手順を紹介します。
1.患者さんに心電図をとる必要性や方法を説明して承諾を得ます。
意識のない患者さんにも声をかけます。
2. 部屋の温度を確認します。
3. 必要な物品を準備します。
この時に記録用紙が十分であるかを確認します。
4. 患者さんに準備をしてもらいます。
・ 患者さんにリラックスしてもらい深呼吸は控えてもらいます。
・ 排尿や排便がある場合は済ませてもらいます。
・ 皮膚の表面に汚れがある場合は酒清綿や蒸しタオルでふき取ります。
・ 腕時計やネックレスなど金属類を装着している場合ははずしてもらいます。
・ ストッキングをはいている場合は脱いでもらいます。
5. 付近に電気製品がる場合は電源を切ります。
ノイズ(心電図をとる上で障害となる電気信号のすべて)の混入を避けるためです。
6. 心電計の電源コードを差し込みます。
7. プライバシー保護のためカーテンを閉めます。
8. 患者さんに足首が見えるまで靴下を下げて上半身裸になってもらい、ベッドに仰臥位になってもらいます。
両上肢は体幹から約10cm離し、両踝間を約10cm離してもらいます。
9. 患者さんの胸部に電極シール、四肢(両手首足首)に電極を正しい位置に装着します。
赤色:右手
黄色:左手
黒色:右足
緑色:左足
10. 心電計を電極シールに装着します。
V1 第4肋間胸骨右縁(赤色)
V2 第4肋間胸骨左縁(黄色)
V3 V2とV4の中間点(緑色)
V4 第5肋間左鎖骨中線(茶色)
V5 第5肋間左前腋窩線(黒色)
V6 第5肋間左中腋窩線(紫色)
11. 心電計の電源をONにします。
12.記録感度が1mV/cm、記録用紙搬送速度が25mm/secであることを確認します。
13.患者さんに今から検査することを説明して会話や深呼吸をせず動かないように説明します。
14.心電計のスタートボタンを押します。
15.波形がうまくとれていることを確認します。
波形がうまくとれていない場合は再度測定しなおします。
16.測定が終了したら終了したことを患者さんに伝えます。
17.記録用紙に月日、時間、患者氏名を記載します。
18.報告が必要な波形の場合は医師に報告します。
なぜ12誘導心電図なのか?
心電図を記録際には通常12誘導心電図を記録するのですが、なぜ12通りも必要なのか疑問な方もいるでしょう。
その理由は心臓の活動を立体的に見るためです。
心臓の電気的活動は平面的なものではありません。
これを正確に知るためにあらゆる部位でいくつもの心電図を測定するというわけです。
例えばV5・V6の波形を見ることで左室側のことが所見できます。
終わりに
12誘導心電図は所見ですがどのような心臓の病気なのか、どの部位に異常があるのかが立体的にわかるようになります。
電極を貼る部位や意味を理解できたら仕事がスムーズに進むでしょう。
看護師さんだけでなく、臨床検査技師さんはもちろん臨床工学技士などコメディカルにも必要な知識です。
基本的な12誘導心電図を理解した上で心疾患について学んでおくことをおすすめします。